今回の「感染症対策の基本」のお話は、20年弱続いている海南病院でのボランティアの中で 患者の方や我々ボランティア技術者が「うつさない為、うつされない為に何かイイ方法は?」との問いに 相談室の担当者と医療安全管理部の島崎先生のおかげで開く事が出来ました。 お骨折りの皆様、色々とありがとうございました。 感染症対策の基本 愛知県厚生連 海南病院 医療安全管理部 島崎 豊 先生 1.感染対策とは? ※患者・利用者を感染症から守る ※スタッフを感染症から守る 感染が成立するための6つの輪 @病因→A病原巣→B排出門戸→C伝染経路(汚染された手指や器具でうつる→管理が必要) →D侵入門戸→E感受性宿主→@病因・・・ ○ 微生物の基礎知識 1.微生物の種類 微生物とは、非常に小さな(微小な)生き物の総称。 最近、リケッチア、クラミジア、真菌(カビ)、ウィルス、原虫が含まれる。 2.細菌 細菌は微生物の仲間で、さまざまな場所に存在している。 〈大きさ〉1mmの1,000分の1.肉眼で見ることができない。 〈種類〉黄色ブドウ球菌、表皮ブドウ球菌、破傷風菌、淋菌、大腸菌、チフス菌、赤痢菌緑膿菌、コレラ菌、梅毒菌、結核菌など 3.ウィルス ウィルスは、生きた細胞でしか増殖できない。 細菌や真菌に有効な抗生物質が効かない。 〈特徴〉ウィルスが感染すると、生体内に免疫(獲得免疫)が成立して生涯免疫が持続する。 ◆二度はかからない・・・麻疹(はしか)、ポリオ、日本脳炎、ムンブス、風疹 ◆すぐに免疫力が低下する・・・パラインフルエンザウィルスなど ◆宿主の抵抗力が弱まると再活性化する・・・ヘルペス科ウィルス(単純ヘルペスウィルス・水痘・帯状疱疹ウィルス・サイトメガロウィルス・EBウィルスなど) 〈大きさ〉20〜250nm(1ナノメートルは百万分の1 nm) 〈種類〉インフルエンザウィルス、麻疹ウィルス、風疹ウィルス、肝炎ウィルス、HIVウィルスなど 《肝炎ウィルス》 経口感染 →A型肝炎ウィルス(HAV) E型肝炎ウィルス(HEV) 【A型は二枚貝を生で食べたり、E型は汚染された肉を食べたりして感染する可能性があるが、A型肝炎・E型肝炎は治る】 血液感染 →B型肝炎ウィルス(HBV) C型肝炎ウィルス(HCV) D型肝炎ウィルス(HDV) ○ 感染対策の基本 1.標準予防策(Standard precautions) 全ての患者について、あらかじめ病原体の存在(MRSAやB型肝炎、C型肝炎など)を認知する事は不可能である。 全ての人の血液や排泄物(弁・尿・喀痰・唾液・創部の排膿液・精液・膣分泌液など)は、感染性があるものとして取り扱う。 2.感染経路別対策
【接触感染で特に気をつけないといけないのは、傷のある手で触った時は手洗いすること! 手指消毒】 【結核菌は空中に浮かんでいて床に落ちない】 【風邪・インフルエンザウィルスは飛沫感染以外にも接触感染が多いので、風邪を引きやすい人は手洗いが重要!】 ◎ 手洗い 1.目的と効果 目的:手指から汚れを除去し、有害な微生物(病原体)を除去する。 効果:1)患者や要介護者をスタップの手指を介した交差感染から守る。 2)スタッフを未同定の病原体から守る。 【接触感染は手から手へ汚染が広がる。たまたま、病院で検査してわかった人だけが「M(MRSA)」と呼ばれているが、一般の人にも蔓延していて、全体の約1割の人が「M」を持っている。という事は、自店のお客さんも1割は「M」を持っている。病院にかかった事の無い人でも「M」を持っている人がいる。MRSA→耐性が出来ない黄色ブドウ球菌で人の鼻にいる常在菌 病院や施設でのボランティアをする場合、トイレに行く前には必ず手を洗ったほうが良い! 】 2.手洗いの原則 1)患者ごとに手洗いする。 2)勤務に就くとき、帰宅するとき。 3)食事やトイレの前後。 4)手指が汚れているとき。 5)清掃や片付けの後。 ※迷ったら、とにかく手を洗う習慣をつける。 【ドアノブなどの手の触れる所に菌は多く付着している 手が半乾きだと手荒れになる→しっかり乾燥させる 石けんで手を洗うと油分が無くなる→バリア機能が無くなるので、その都度ローションで保護する】 3.手洗いの準備 1)爪は短く切り、マニキュアはしない。 2)指輪や腕時計をはずす。(指輪がはずす事ができない場合は指輪をずらして洗浄・乾燥させる) 3)半袖もしくは、腕まくりをする。 4.手洗いのポイント 1)手洗いは日頃から練習しておく。 2)水が跳ねないように注意する。 3)手洗い後、手を完全に乾かす。 ※手荒れがあると手洗いしても菌数が減少しない。 また、傷があるとそこから感染するリスクもあるため日頃から手のケアに心がける。 【水洗いだけだと、ほとんど菌が落ちないので20〜30秒の石けん洗いが必要】 5.手洗いの手順 ※最低20〜30秒洗う事が大切!! @手の平と手の平を擦る A右手の平で左手の甲に、また、その反対の動作をもう一方の手にも行う B指を組み合わせ、手の平と手の平を擦る C反対の手の平で爪まで擦る D拇指の間を反対の手の平でつつむように擦る E指先は、手の平中央で円を描くように擦る F手首も忘れずに洗う (参考アドレス) http://serv1.ice.ous.ac.jp/~majima/kansen.htm http://www.hosp.go.jp/~msapporo/images/ict/manualtearai2.pdf http://dogcat11221122.hp.infoseek.co.jp/handwashing.html ○ 針刺し・切創対策 針刺し切創による感染率 HBV>HCV>HIV 1〜62% 1.8% 0.3% 1.血中ウィルス感染症の感染経路 @経皮的暴露=針刺し切創事故 A経粘膜的暴露=眼粘膜、口腔粘膜など B既存の創傷部位への暴露=あかぎれ、かさむけ 【針で刺すのもカミソリで切るのも同じこと! 0.3%の感染率のHIVでも、患者を切ったカミソリで自分を切ると感染率が20〜30%に跳ね上がる! 手の傷はフィルム剤などで直接触れないように注意する 】 ○ 散髪や髭剃りで守ること 一患者、一手洗いを励行する→接触感染対策 カミソリは使い回ししない→髭を剃ることによって出血する カミソリが汚染される 血液・体液感染対策 肝炎ウィルス ヒト免疫不全ウィルス(エイズ) 【カミソリの柄にも付着する事が多いのできちんと洗浄し消毒する】 シェービング用のブラシは確実に洗浄する→血液・体液による汚染が考えられる 血液・体液感染対策 肝炎ウィルス ヒト免疫不全ウィルス(エイズ) 【シェービングブラシはよく洗う事が大切 石けん分が残っていると消毒にならない】 タオルは共有しない→血液・体液による汚染が考えられる 血液・体液感染対策 肝炎ウィルス ヒト免疫不全ウィルス(エイズ) 接触感染対策 MRSAなど 【タオルでは頭や襟を拭くタオルより、顔を拭くタオルが血が付着している可能性があるので伝染しやすい】 施設・病院等の多人数対応のボランティアでは器具・タオル等の使い回しが当たり前となっています。 店舗で消毒をして安全を確保していても、ボランティアに来て感染したという事では泣くに泣けません。 これから結婚して子供を生んでいく若い世代のメンバーが多いので、私達の世代が安全な環境作りに配慮していかないと・・・ 現状は、病院ではアシスタントを含め20人弱で40〜50人の患者さんを2時間程度でカット・襟剃りします。今年の4月から始まった老人福祉施設ではアシスタントを含め10人強で50人程度の女性を2時間程度でカットします。この2箇所を1日で午前・午後と別けて行っています。 病院ではご好意により「消毒用脱脂綿」、「ペーパータオル」、「手指消毒用ジェル」を用意して頂いていますが、体調の優れない患者さんが並んで待ってみえるので手洗いに行く時間も取れない状況です。(老人福祉施設ではトリマー等で襟剃りをしているので特に消毒はしていませんが・・・) レーザーの替え刃は使い捨てにして、ボランティア時間の延長、もしくはカットされる方を減らし、1人当りの時間をかければ実行可能というのはわかりますが、このメンバーのほとんどは、前日の夜も勉強会で午前様。ボランティア終了後も講習が入る事が多く、休日がほとんど無い状態です。私は近いので良いのですが、ボランティアに来てもらうのに片道1時間以上かかったり、高速を使って来るメンバーも多いです。モチロンそれらの事に関して不満を言う人は1人もいません。だからナントかしたいのです。ですので、これを読まれた方で、実行できる方法を行ってみえる方、良いアイディアなどをお持ちの方がありましたら是非教えてください。m( _ _ )m |